お客様へのメッセージ
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お客様へのメッセージ

2年半にわたりやすらぎ通信のコラムを担当してきましたが今回が最終回です。
ご拝読いただきありがとうございました。
これまでは養生法を中心にお話してきました。前回は東洋医学の“ものさし”である陰陽や五行学説のまとめをお話ししたので、今回は四季の養生法の考え方をもう一度お話して最後とさせていただきます。
先人の知恵
人間もだんだんと年を重ねていくと陽であるエネルギーが不足し始めます。現代は冷房や冷蔵庫が普及し、一年中冷たい物を食べたり飲んだりすることができます。冷たい物を摂り過ぎると陽気が損傷してしまいます。「年寄りの冷や水」という諺があるように、だんだんと年を重ねていくと冷えるような行為は慎まなければいけないのです。日本には四季があり、四季折々の食べ物があります。その食べ物は温めたり冷やしたりする性質があります。簡単に分けると暖かい季節にとれたものは冷やす性質があり、寒い季節にとれたものは温める性質があります。しかし、現代の食料品店の店頭では季節が感じられなくなり冬でも夏野菜が並びますし、レストランのサラダにはいつでもトマトやキュウリが入っています。これは、陰陽のバランスとしては違和感があります。
また食べ物だけではなく飲み物にも食性はあります。欧米で愛飲され、最近は日本の方もよく飲むようになった苦味のコーヒーは、摂りすぎると胃腸を冷やします。それを防ぐために甘味の砂糖やはちみつ、ミルクと共に、辛味のシナモンを添えたりします。また、日本でも苦味の抹茶をいただくときは、先に甘味のお菓子を先に食べる作法があります。抹茶は緑茶の中でも特に冷やす性質が強いため、甘味で胃腸を保護してから抹茶を頂くのです。一方、緑茶を全醗酵して作られる紅茶は、体を温める飲み物です。元は同じでも醗酵により性質が変わるのです。
~春は生じ 夏は長じ 秋は収し 冬は蔵する~
東洋医学では四季をこのように捉え、それぞれの特徴にあった養生法を考えます。中国伝統医学の古典の一つである「黄帝内(こうていだい)経(けい)」『素(そ)問(もん)・四(し)気調(きちょう)神(しん)大論(だいろん)』では、次のように書かれています。
「四時陰陽の変化は万物の生長収蔵の根本である。そこで聖人は春と夏には陽気を養い、秋と冬には陰気を養って、この根本に順うのである。こうして聖人は、万物と同様に、生長発育の正常なリズムを充分保てるのである。仮りにこれに反してしまうと、生命の根本が傷つき伐られて、真気もまた損なわれ壊えてしまう。そこで陰陽四時の変化というものは、万物の生長、衰老死亡の根本だというのである。これに反すると災害をまねき、これに順えば疾病も生じない。これがつまり養生法をわきまえるということである。養生法については、聖人は着実にこれを行うが、愚か者はかえってこれに背いてしまう。」
日本においても、基本的にはこのように考えていました。四季の変化に応じて食べ物は成長し実りあるときを迎えます。その四季折々の食べ物が旬の食材です。食べ物は季節と切り離せないものであり、昔の人たちは春夏秋冬それぞれの季節に合わせて生み出される自然の恵みを巧みに取り入れてきました。栄養をたっぷり含んだ旬の恵みを取り入れることにより、その季節を乗り切る力を得ていたのです。
これまで、季節の起こりやすい症状や養生法をお話してきました。春は苦みの山菜に、夏は水分たっぷりの野菜、秋は肺を潤す果物、冬は体を温める根菜とそれぞれの季節に摂りたい食材があります。しかし、食養生は、それだけ摂っていればいいわけではありません。五味(酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(塩辛い))をバランスよく摂ることが大切です。そのバランスが優れているのが、日本の伝統食です。一つの汁物と一つの主菜、二つの副菜の「一汁三菜」で、五味のバランスが摂れるようになっているのです。それらの食材は、季節ごとに変化し、その季節にとれた旬の食材で飾られます。
春は、苦味のふきのとうや菜の花・山うど・たけのこなどをはじめ、魚介類では、わかめ・赤貝・はまぐり・あさり・真鯛などが旬になります。
夏は、水分をたっぷり含んだキュウリやトマト・スイカに酸味の梅の実やすもも・トウモロコシや枝豆、魚介類ではうなぎにきす・タコ・かんぱち・はもなどが旬を迎えます。
秋は、梨・ぶどう・イチジク・柿が喉を潤します。大根・なす・しょうが・栗・さといも・さつまいも・しめじ・シイタケ・松茸などの野山の幸に、さんま・いわし・秋さば・さわら・鮭・毛ガニなども旬を迎え、食欲の秋の食卓を彩ります。
冬は、ゆず・レモン・みかん・きんかん・リンゴなどの果実、海老芋・くわい・かぶ・ニンジン・三つ葉など温性の野菜や、ぶり・まぐろ・むつ・ふぐ・あんこう・たら・金目鯛などが寒さを吹き飛ばします。
こうして「一汁三菜」の中に旬の食材が盛り込まれ、季節の恵みを感じ食卓を彩り健康的で豊かな食事になっていくのです。

○屠蘇(とそ)の起因
最近は、お正月に屠蘇散を飲む方も少なくなってきましたが、一年の邪気を払い長寿を願った飲む日本の伝統行事です。
昔嵯峨天皇の御代弘仁年間に唐の博士蘇明という人が和唐使として来朝の折り絹の袋に入れた屠蘇散と称する霊薬を献上されました。天皇は元旦より三ケ日清涼殿の本廂に出所されて四方拝の御儀式の後御酒に御屠蘇を浸して用いられたのが始まりとされております。その後、国民もこれに倣って正月三ケ日の儀式として屠蘇を用いる様になり、一年の邪疾病魔を除き、幸福の年を迎えるものとしてお正月には家毎に必ず屠蘇酒を戴き一家揃って新年のお祝いを致しました。屠蘇とは、邪気を屠(ほふ)り、魂を蘇(よみがえ)らせることから名付けられました。
2年間、計8回にわたり「やすらぎ通信」のコラムを書いてきました。そこで、東洋医学での“ものさし”である陰陽や季節の養生法を通じ五蔵(五行学説)についてお話をしてきました。
今回は、それら『東洋医学の“ものさし”において、健康とは?』と『先人がどうして養生が重要だと語っているのか』をお話していきたいと思います。
東洋医学的健康とは
一般的に健康とはどんな状態の事をいうのでしょうか?お医者さんで検査してもらって異常がなければ健康なのでしょうか? 例えば冷えがあり、つらくてしょうがない人が検査をして異常がなければ西洋医学では何もできません。しかし、その人はつらいのです。これではその人は、健康とは言えないでしょう。
東洋医学が考える健康とは、臓腑などの体のシステムの働きが正常で、そのシステム全体のバランスが取れている状態です。そして、このバランスは季節などの外界の環境とのバランスも含まれます。また、体だけではなく心も含めてバランスが取れている状態が「健康」なのです。例えば冷えですが、冬に体を冷やすアイスクリームを食べていると寒邪が体に入ってきて冷えが発生します。あるいは、胃腸が弱く上手く食べ物を消化ができず、そこからエネルギーが作れずに冷えが発生しているかもしれません。 前者は陰陽のバランス、後者は臓腑のバランスが悪くなっていて健康とは言えません。
陰陽の“ものさし”とは
第1回目でお話しした「陰陽」です。東洋医学では世の中のすべてのものを「陰」と「陽」に分けています。天は「陽」、地は「陰」、夏は「陽」、冬は「陰」という具合です。そしてこの比較は相手がいて初めて成り立ちます。例えば、陰の季節の冬の昼は、冬の夜に対して「陽」なのです。このように変化をしながらバランスを保っています。 では、体の働きとしての陰陽を見てみると、基本的には「物質=陰」「機能=陽」と捉えます。物質とは簡単に言うと「血」「水(津液)」です。また、機能は「気」というエネルギーです。私たちの体の働きは、これらの物質と機能(陰と陽)のバランスが保たれていることが必要なのです。
現代は暑く陽気が盛んな夏に、クーラーで冷やされる事で冷えが発生します。これは暑い時期は汗腺を開けて発汗して体の熱を逃がそうとしているのに、クーラーで過剰に冷やされると寒邪が入りやすくなるからなのです。冬に寒邪が入りにくいのは汗腺を締めて、体が冬に備えているからなのです。 クーラーを例にしましたが、食べ物にも言えることです。夏が旬の食べ物は体を冷やすようになっているのに、今は1年通して食べることができます。冬に夏の食べ物ばかりを食べてしまうと体が冷えてしまいます。自然界は上手くできているのに、あまり不自然なことをするとバランスが崩れてしまうのです。
五行学説としてのバランス
東洋医学は陰陽の他に、世界を5つの物から出来ていると考えました。
この5つの物は「木・火・土・金・水」です。季節の養生で少しお話していますが、木は春、火は夏、土は長夏(梅雨)、金は秋、水は冬です。この五蔵は、木は肝、火は心、土は脾、金は肺、水は腎です。その他、味(酸・苦・甘・辛・鹹)や志(怒・喜・思・悲・恐)なども5つに分けられます。そして、これらのバランスが崩れると健康ではなくなってしますのです。
では、この5つの物はどのように成り立っているのでしょうか。
五行の間には、「お互いに依存する関係(相生(そうせい)関係)」と「お互いに抑える関係(相克(そうこく)関係)」があります。五行学説はこの2つの関係がバランスをとることでうまく成り立っています。 相生関係は、「木は火を生む」「火は土を生む」「土は金を生む」「金は水を生む」「水は木を生む」という母と子の関係になっています。相克関係は、「木は土を抑える」「土は水を抑える」「水は火を抑える」「火は金を抑える」「金は木を抑える」という関係になっています。
これらの「依存する関係」「お互いに抑える関係」のバランスが取れているとうまくまわっていくのです。ちょっとわかりにくいかもしれませんので例えると、ストレスがあると(ストレスは肝に影響する)心に影響して不眠や不安などが起こります。これは肝と心の相生関係がうまくいかなくなって起こる現象です。また、ストレスがあると人によっては胃腸の調子が悪くなります。これは、肝が脾(胃腸)を抑え(相克)すぎてしまうことで起こる現象なのです。
また、日本は四季があり季節が移り替わります。季節も5つ分けられました。そして其々にその季節の性質があり、それに反することをすると我々の体に影響を及ぼして体調が悪くなります。それを防ぐことが養生法なのです。
健康で元気に楽しく人生を送ることは、誰もが望んでいることです。先人もそう考え、養生の教えを伝えています。日本の伝統的な食べ物も理にかなった組み合わせになっています。「一汁三菜」という言葉がありますが、これが日本の食卓の基本でした。ご飯に味噌汁(一汁)、主菜(焼き魚など)ひとつに副菜(煮物や酢の物)ふたつ(三菜)、これに漬物、季節の果物が添えられます。ごはんで炭水化物、汁物でミネラル・水分、焼き魚などでたんぱく質・脂質、副菜で食物繊維やビタミン・ミネラル、漬物でお腹に必要な菌が摂れます。理想的ですよね。では、今の食卓はどうでしょう? また、食べ物にも陰陽、五味があります。黄帝内経に「五味は口から胃に入り、五臓の気を養う」と言っています。このように五味は五臓と密接な関係しています。
人は精という生命エネルギーを持っています。この精は親から受け継いだ先天の精と食べ物などから得た後天の精があり、後天の精を食べ物から得られないと精は消耗してしまうのです。
私たちが食べている伝統的な「一汁三菜」の食事は、先人が教える五味がそろっています。甘味のご飯、鹹味の味噌汁、甘味または鹹味の魚や肉、そこに添えられる辛味の薬味、酸味の酢の物、甘味と苦味の三菜や野菜の煮物などと五味の調和がとれ、五臓の気を養っているのです。


先月、腸内環境についての話題がテレビで取り上げられていました。
腸管は、腸内細菌や口を通じて外界のいろいろな細菌に曝されています。腸管内には数百種類以上でおよそ100兆個もの腸内細菌が棲息しています。その腸内細菌の集合を腸内細菌叢と呼びます。これらは食べ物や消化液などにより、その構成が変化します。また腸内細菌叢の構成や腸内発酵によりつくられた代謝産物が、腸管上皮細胞や免疫細胞、神経細胞、内分泌細胞に作用することで生体機能全体に影響を与え、それが再び腸内細菌叢の構成に影響しています。通常それが複雑な腸内生態系の絶妙なバランスのもと、恒常性を維持しています。外界からのストレスや老化などの多少のバランスの崩れはもとに戻す頑健性を持っていますが、過度のストレスなどの外的要素などでその恒常性が破錠すると、腸管防御能が低下したり、炎症性腸炎や大腸がんといった腸管関連疾患を発症したり、肥満や糖尿病などの代謝性疾患の発症に影響をおよぼしたりします。
ヒトの腸内細菌は、食習慣で3つのタイプに分かれます。「肉食系」はBacteroidesタイプ、「草食系」はPrevotellaタイプ、「雑食系」はRuminococcusタイプになり、日本人は、もともと食物繊維の摂取量が多いのでPrevotellaタイプになります。しかし、今の日本は食の欧米化で食環境が変わってきています。それに伴い欧米の人に多かった大腸がんが増えてきています。
腸内細菌叢は遺伝的素因も関係していて、双子を調べた実験では、Christensenellaceaeという細菌類の存在量が二卵性双生児より一卵性双生児で似ていて、その量が少ないほど太っていたそうです。「その子の将来は親を見ろ」といいますが、そういうことなんですね。
繰り返しになりますが、環境要素のうち食習慣が腸内環境と密接に関わっています。日本では近年、食の欧米化で大腸がんが増えていますが、食事内容と大腸がんの関連を示す研究報告があります。アフリカ系アメリカ人の大腸がん発症率は、南アフリカ農村部に住むアフリカ人の大腸がん発症率と比較すると10倍以上高いことが知られており、両者の食習慣は大きく異なっています。アフリカ系アメリカ人は高動物性タンパク質、高脂肪、低食物繊維の典型的な欧米食で、南アフリカ農村部のアフリカ人は逆に高食物繊維、低脂肪の食習慣だった、彼らの食事を2週間逆にして腸内環境を見ると、農村部の食事をしたアフリカ系アメリカ人では腸内で糖質の代謝発酵が促進し、制御性T細胞の分化を誘導する短鎖脂肪酸の産生が増加しました。また、腸管の炎症マーカーも低下し、さらに大腸がんの発症にかかわる二次胆汁酸も低下していました。一方でアフリカ人が欧米食を摂取すると、これらがすべて悪い方に変化していました。このことから、食環境が腸内環境に影響することがわかります。
このように、欧米人の腸内細菌叢は、原始的な生活をしている人々の腸内細菌叢と比べて多様性が低下していることが知られていますが、マウスの実験で高脂肪・低繊維食の摂食は腸内細菌叢の多様性の低下を招きますが、同一世代ではその後高繊維食を摂食すると腸内細菌叢の多様性が回復しましたが、世帯を超えて高脂肪・低繊維食を摂食すると、その後高繊維食を摂食しても多様性は回復しませんでした。これは、動物実験ではありますが、日本人の食の欧米化に対する注意喚起とも言えます。
食物繊維は腸内環境を良くすることはお話しました。では、知らず知らずのうちに腸内環境を悪くする物にどんな物があるのでしょうか。
最近、報告されている物に食品添加物があります。食品添加物は人の健康を損なわない、国が安全性を認めた物ですが、その中に腸内細菌叢に悪影響することがわかってきたものがあります。その一つに人工甘味料があります。人工甘味料は消化管から吸収されずに大腸に届き、腸内細菌叢の変化を招き、その結果耐糖能の悪化を招くことがわかってきました。また、食品添加物の一種である乳化剤についても動物実験レベルではあるものの、乳化剤の摂取は腸内細菌叢の変化を招き大腸炎の発症を促し、肥満や血糖値の上昇といったメタボリック症候群を引き起こすことが明らかになっています。
腸内細菌叢が我々の身体に大きな影響をおよぼしていることは明らかです。その腸内細菌叢に影響をおよぼすものは食事です。食を改善し腸内細菌叢を良い状態にすることが健康維持には大きく関係しています。

いつも当店のホームページを閲覧いただきましてありがとうございます。
これから時々、コラムに登場することになりました。ポルタ店店長の佐藤直哉と申します。
漢方薬は皆様にとってあまり馴染みの無いものであると思いますが、そんな漢方薬に少しでも興味を持って頂けるよう、この処方解説を通して、東洋医学の考え方をシリーズでお伝えしていこうと思います。
漢方薬には様々な処方がありますが、私が特に愛着のある処方を順次掲載させていただきたいと思います。もしこのホームページをご覧の方で、この処方を解説してみて!などのリクエストがございましたら、ぜひ店頭でお申し付けください。
第一回目となる今回は“婦宝当帰膠”です。
婦人科の漢方薬としては割と有名な処方なのではないでしょうか。あまり有名じゃないと思われた方も最後まで読んでいただければ幸いです。
婦宝当帰膠
原典:当帰養血膏(とうきようけつこう)
薬味:当帰(とうき)黄耆(おうぎ)地黄(じおう)芍薬(しゃくやく)茯苓(ぶくりょう)
甘草(かんぞう)川芎(せんきゅう)党参(とうじん)阿膠(あきょう)白糖および黒糖
主治:肝血虚
効能:補血調経
症候:面色蒼白あるいは萎黄無華・頭暈目花・両目干渋・口唇舌爪甲淡白無華・頭髪不栄・多夢失眠・耳鳴耳聾・四肢麻木・筋脈拘攣・婦女は月経過少あるいは経行後期。
と、教科書には記載されていますが、これでは解りません。
まず原典にある当帰養血膏の“膏”の字、これは膏剤ですよという意味ですが、膏というと“塗り薬=軟膏”を想像する方が多いと思います。膏剤には内服膏剤と外用膏剤の二種類があります。
当帰養血膏は内服膏剤の中でも煎膏剤と呼ばれるものに分類され、生薬の浸出液を濃縮してから蜂蜜や砂糖などを加えて作った濃厚な半固形製剤で、甘いので飲みやすく、慢性疾患や虚弱な人に使いやすいという利点があります。
では処方についての解説に移りましょう。
薬味(各生薬)の解説をしても、つまらないと思われる方が多いと思いますので割愛させていただきます。(興味のある方はリクエストしていただければ追々書いていきます。)
主治の肝血虚って何?
東洋医学では身体の構成材料は気・血・津液(しんえき)・精の4つと規定してあります。
その働きは主に2つあり、“肌肉・筋脈を濡養す(きにく・きんみゃくをなんようす)”“神志の物質的基礎(しんしのぶっしつてききそ)”と述べています。
肌をしっとりさせ艶のあるものにし、筋肉をしなやかにする。神志とは意識のことで、これは誰かを意識するの意識ではなく、意識を失う=眠りを安定させるという意味になります。意識、無意識の切り替えをはっきりさせると考えると良いでしょう。
この血は古書において“人動なれば即ち血は諸経に運び、人静なれば即ち血は肝の臓に帰す”と云われており、また五臓の一つである“肝”の働きとして“肝は血を蔵す”とも云われております。
肝が血の貯蔵タンクとなっていると考えて下さって構いません。
つまり、血が不足する=肝血虚ということになります。
次に、効能・症候の解説をしてみましょう。
補血調経とあります。補血は血を補うの意味で、調経とは月経を調えるの意味になります。月経は妊娠に使われなかった子宮内膜が剥がれ落ちることですが、見かけ上は血液が出ています。1回の生理につき約200mlの血液が失われています。月経の有る女性は毎月この分の血液を非生理時に作らなくてはなりません。食べるもののバランスも重要ですが、それでも足りなければ月経量が少なくなるか遅れることになります。
症候がたくさんあるのですが、言葉の意味さえ理解できればあまり難しいことはありません。
面色蒼白あるいは萎黄無華(めんしょくそうはくあるいはいおうむか):顔色が青白いもしくは肌にくすみがあり艶が無い
頭暈目花(ずうんもっか):めまいがして目がかすむ
両目干渋(りょうもくかんじゅう):目が乾く
口唇舌爪甲淡白無華(こうしんぜつそうこうたんぱくむか):唇や舌、爪、手の甲が乾燥していたり割れやすい
頭髪不栄(とうはつふえい):髪の毛がパサついたり、艶が無い
多夢失眠(たむしつみん):睡眠が浅い。夢をよく見る
耳鳴耳聾(じめいじろう):耳鳴りがしたり、テレビの音が大きいと家族に言われる
四肢麻木(ししまぼく):手足がしびれる。因みに“麻”という漢字にはしびれるという意味があり、皆さんにおなじみの麻婆豆腐はしびれるくらいに美味しいという意味があるそうです。
筋脈拘攣(きんみゃくこうれん):よく脚がつる。脚だけでなくても構いません。
婦女は月経過少あるいは経行後期(ふじょはげっけいかしょうあるいはけいこうこうき):効能の説明のところでも書かせていただきましたが、血の不足があると出血することができないため月経量が少なくなるか遅れることです。
婦宝当帰膠は血を補うためには最も薬力のある処方と考えていただいて良いと思います。不妊などでお悩みの方には有名な漢方薬となっていますが、年齢を問わず女性であれば生理のことだけではなく美しさを保つ要薬になるのではないでしょうか。
まだまだお伝えしたいことがたくさんあるのですが、今回は此処までとさせていただきます。また次回以降、皆様に少しでも東洋医学の面白さをお伝えできればと思っております。
(佐藤直哉)

やすらぎ通信を書き始めて、今回で7回目になりました。
最近は、テレビや雑誌などの影響で、一般の方たちにも漢方が知られるようになってきましたが、番組を面白くするためか情報を簡単に伝えるためか、中には「そんなこと言っていいの?」と思うことがあります。前号では、風邪の漢方イコール葛根湯ではないことをお話しましたが漢方も薬ですから正しい使い方をしていただきたいと思っています。そこで、今回はテレビCMでよく耳にした古典の原文をご紹介しながら、東洋医学(漢方)について解説したいと思います。
帝曰く、人 年老いて子なき者は、材力尽きたるか、将(は)たまた天数然るか。岐伯曰く、女子は七歳にして腎気盛し、歯更(かわ)り髪長ず。二七にして天(てん)癸(き)至り、任脈通じ、太衝の脈盛し、月事時を以て下る。故に子あり。三七にして腎気平均す。故に真牙生じて長極まる。四七にして筋骨堅く、髪の長極まり、身体盛壮なり。五七にして陽明の脈衰え、面初めて焦(やつ)れ、髪初めて堕(お)つ。六七にして三陽の脈上に衰え、面皆焦れ、髪初めて白し。七七にして任脈虚し、太衝の脈衰少し、天癸渇き、地動通ぜず。故に形壊(つい)えて子なきなり。丈夫は八歳にして腎気実し、髪長じ歯更る。二八にして腎気盛し、天癸至り、精気溢写し、陰陽和す。故に能く子あり。三八にして腎気平均し、筋骨勁強たり。故に真牙生じて長極まる。四八にして筋骨隆盛にして、肌肉満壮たり。五八にして腎気衰え、髪堕ち歯槁る。六八にして陽気上に衰竭し、面焦れ、髪鬢頒白たり。七八にして肝気衰え、形体皆極まれり。八八にして則ち歯髪去る。腎は水を主り、五臓六腑の精を受けてこれを蔵す。故に五臓盛なれば、乃ち能く写す。今五臓皆衰え、筋骨解堕し、天癸尽きたり。故に髪鬢白く、身体重く、行歩正しからずして、子なきのみ。
この文章を簡単に解説すると、人の成長や老化を具体的に示したもので、女性は7歳ごとに成長し、28歳~35歳ぐらいまでに精力がピークになりその後衰えていく様を現し(二七は2×7で14歳のことです。)男性は、8歳ごとに成長、老化が起こると言っています。この「黄帝内径」は約2千年前の書物といわれていますが、女性は14歳(二七)で生理が起こり、49歳(七七)で生理がなくなると言っていることからも、今も昔も成長・老化はそれほど変わっていないことがわかります。(医学の発達で寿命は延びていますが)
このことを、漢方的に言うと、「腎」という臓の力の満ち引きであらわされ、五臓の精を受けて精を蓄えています。それゆえ、五臓が盛んであれば年相応でいられますが、五臓が衰えると老いが早まってしまいますということです。2千年前に現代に当てはまるこのような正確な記述があることに、驚かされると共に貴重なことだと思います。また、「黄帝内径」の後に「傷寒論」という古典がありますが、かの有名な「葛根湯」や「麻黄湯」などがここに記載されていて、現代でも薬として用いられていることも漢方の偉大さを物語っています。(西洋医学には2千年も前の薬ってないですよね)
では、今なぜ漢方薬が注目されているのか?
西洋医学は、病気の場所を見ます。少し違った言い方をすると、病気の場所しか見ません。目の病気であれば目しか見ていません。しかし東洋医学は、体全体のバランスの崩れが目に影響したと見ます。そして、使われる薬も西洋医学では抑えつけたり除いたりする薬を使いますが、東洋医学では主に補う薬で心身のバランスを整えて病気を治そうとします(東洋医学でも抑えつけたり除いたりする薬もありますが)。
人は、自然界の中で生きています。人のバランスも自然界とは切り離して語ることはできません。また、心と体も切り離せません。人間は自然界も含め心身のバランスで成り立っているのです。
西洋医学はできてしまった物を外科的にとったり、感染症を起こしていればその原因菌を殺してしまうような治療。このような病気は西洋医学が得意とする分野で、東洋医学は得意ではありません。しかし不足や衰えが原因で起こってしまったような病気は、東洋医学が得意とする分野です。具体的にはアトピーや婦人科疾患、メンタル疾患などが得意疾患として挙げられます。現代は高齢化や食の乱れ、冷蔵庫の普及による冷え(陽の不足)など、不足を起しやすくなってきています。それら時代的背景も漢方が注目される所以かもしれません。
「女性の7歳ごとの変化」についてそれに関連する更年期障害を東洋医学的に見てみましょう。
閉経という正常な生理変化が49歳(七七)前後で起こります。女性であればだれもが通る道です。しかし、黄帝内径にあるように“天癸渇き”(天癸は性ホルモン)といっているように、性ホルモンの急激な変化が生じます。それまで、女性の身体は女性ホルモンで守られてきたので、その守り手がいなくなるのですから、心身に大きな影響を与えることになるのです。しかし、この閉経前後を「更年期」といい心身に不調をきたすと「更年期障害」といいます。何事もなく「更年期」を通過する人も多くいらっしゃいます。最近は男性更年期もありますが、性ホルモンの変化が女性ほど急激でないので症状も緩和なことが多いようです。
この更年期障害を漢方的にとらえると腎の衰えです。専門的な言い方をすると腎虚です。この更年期障害における腎虚には、腎陰虚と腎陰陽両虚の2つのタイプに分けられます。基本的に女性は陰の性質があり、生理や妊娠、授乳をしてきたこともあり、陰の不足になりやすい傾向にあるようです。そのため、ホットフラッシュや多汗、手足もほてりといった熱症状が起こりやすいのです。このような症状のときは、「知柏地黄丸」や「杞菊地黄丸」などを中心にしていきます。また、陽の不足も伴う場合は「参馬補腎丸」や「至宝三鞭丸」を使います。しかし、この性ホルモンの急激な変化は簡単ではないことが多いので、「知柏地黄丸」や「杞菊地黄丸」に紫河車(胎盤エキス)を併せたり、症状によって他の漢方薬を足したりもしていきます。
今回は、更年期という状態を例に人の老化について解説しました。この連載コラムの第1回目に陰陽について解説していますが、臓腑で中心になるのが腎です。腎は成長、発育、生殖を主る臓腑で、精を貯蔵しています。補腎の漢方薬で有名なのは「八味地黄丸」で、腎陽虚の薬です。おしっこの異常で有名になった処方です。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。加齢による衰えを予防していく養生として補腎の漢方をうまく使うといいですよ。(このやすらぎ通信を編集者も飲んでるんですよ! 紫河車)

大手食品メーカーのカレールーの宣伝に違和感を感じるのは私だけだろうか?
この商品は、「特定原材料7品目」を使用していないことをうたっている。皆さんは、この広告からどんなイメージをするでしょうか。私は食物アレルギーを持っているお子さんでも食べられるので、他の家族と分けて作らなくてもいいんだなと思うと感じてしまいました。確かに、国が定めた「特定原材料7品目」(アレルギーを起こしやすい、表示が義務化された原材料)は入っていないので、この7品目にアレルギーがある方でも、この製品には入っていないのでアレルギーは起こさないのかもしれませんが、パッケージの裏の原材料を見てください。多くの添加物が使われています。その中にはヤシ油クリーミングパウダーが使われています。私がよく見かけるカレールーにはパーム油がよく使われています。ヤシ油はココナッツオイルのことです。(去年流行った油です)これらの油の組成は飽和脂肪酸、一価の不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸です。多価不飽和脂肪酸はリノール酸で、ω6系脂肪酸です。以前からお知らせしているようにω6系脂肪酸は炎症を起こす油なのです。
昨年の実験医学という本に、「卵白アルブミンを摂取するとアレルギーを呈するマウスの食物アレルギーモデルを用いた検討で、ω6系のリノール酸が多い大豆油を含んだ餌を与えると腸管アレルギー症状が強く出る一方で、ω3系のαリノレン酸が多い亜麻仁油を含んだ餌を与えると腸管アレルギー症状が大幅に緩和した」と出ていました。これはあくまでも動物実験ですので、食物アレルギーがある方がこのようになるとは限らないのですが、脂質、特に多価不飽和脂肪酸の組成は重要なようです。
このことだけとってもこの商品を食物アレルギーがあるお子さんに積極的に食べさせていいのかなと思ってしまいます。
確かに、食物アレルギーのある方がいらっしゃる家庭では食事は非常に神経を使い大変だと思うので、このような商品は便利でいいのでしょうけれど…
我々の体にとって、食は非常に重要です。商品イメージに惑わされることなく、しっかり成分表示を見て選んでもらいたいと思います。

読売新聞は、昨年高度不妊治療を行う医療機関に2014年の治療実績などをアンケートし、その実績を発表しました。
当店でも子宝についての漢方相談は多く、そのほとんどの方が医療機関にかかられています。ご相談に来られると、一応どこの医療機関に行かれているかを聞いています。最近は人気のあるところはなかなか予約が取れないそうです。しかし、読売新聞の実績を見ても、成績が良い医療機関にかかるのがいいように思いますが、当店に来られる方たちの評判を聞いていると、必ずしも表の上位にあるからいい訳でもないようです。
漢方薬局選びもそうだと思いますが、医療機関を選ぶときも数字だけではなく、相性やその医療機関の姿勢なども考慮して選ぶことが大切なんでしょうね。
今回、読売新聞の実績をみて、今か受診している医療機関を信頼されてるのであれば、すぐに変えたりしないほうがいいように思います。
アスピリンを長期服用している人達が、服用していない人達と比べ大腸がんの発生が有意に低下することが疫学調査で示されました。アスピリンは非ステロイド性抗炎症薬で、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害してプロスタグランジンという痛みや炎症に関係する物質の生成を阻害する薬です。このことから研究が進み、COXががんの発現や転移、増殖に関係していることがわかってきました。
このプロスタグランジンは、脂質中のリノール酸からアラキドン酸という物質を経てこのCOXによって作り出されます。正常細胞が何らかの影響でCOX-1によってつくられたプロスタグランジンE2が関係し、前がん病変ができ、その後、その組織の間質細胞で誘導型のCOX-2が発現していき、がんを発現させていくのです。
また、国立がん研究センターのコホート研究では、いくつかのがんと魚の摂取量ががん罹患率に関係していることが示されています。この研究の考察では炎症抑制に働く魚に含まれる油の摂取が多いほど、ガンに罹り難いと言っています。
この2つのことから脂質、特に多価不飽和脂肪酸の摂取ががんの発現や転移、増殖に関係がありそうです。
このようにがんに対する研究が進みいろいろなことがわかってきており、疫学データも多く出てきています。
一般的に、がんは何らかの要因で免疫力が下がり、それが原因でがんができてしまうと思われがちですが、それほど単純ではなく身近でも非常に元気な人ががんになってというような経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?確かに免疫が結果的に下がってしまうことはあるかもしれませんが…
がんを予防する為や不幸にしてがんを患ったからといって、やみくもに免疫を上げればいいわけではありません。場合によっては逆にその行為ががん細胞を助けてしまうことにつながる可能性もあります。
がん組織では炎症が起こっています。この炎症が起こらないようにすることががんの予防につながる可能性があるといえるでしょう。